
ヴィタリック・ブテリン氏、イーサリアムの検閲耐性を極限まで高める新アップグレードを支持

イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏が、ネットワークの検閲耐性を大幅に強化する次期アップグレードに対し、「イーサリアムは本気だ(Ethereum is going hard)」と強い支持を表明した。このアップグレードは、イーサリアムが追求してきたメインストリームへの普及過程で妥協を余儀なくされてきた「自己主権」と「分散化」というサイファーパンク的ルーツを、2026年を通じて完全に取り戻すための野心的な計画の一環である。
「FOCIL」と「EIP-8141」による検閲への鉄壁の防御
今回、議論の的となっているのは、2026年後半に予定されている大型アップグレード「Hegota(ヘゴタ)」の目玉となる「FOCIL(Fork-Choice Enforced Inclusion Lists:フォーク選択強制包含リスト)」である。これは、検証者(バリデーター)に対して特定のトランザクションをブロックに含めることを強制する仕組みだ。現在、イーサリアムのブロック構築は少数のオペレーターに集中しており、特定の取引を排除する「検閲」のリスクが指摘されている。FOCILは、各スロットでランダムに選ばれた17の異なるアクターに包含権限を分散させることで、たとえブロック構築者が悪意を持っていても、1〜2スロット(ほぼ即時)以内に確実に取引をオンチェーンに含めることを保証する。
ブテリン氏は、このFOCILが「EIP-8141」と相乗効果を発揮すると指摘した。EIP-8141はアカウント抽象化(AA)をさらに進化させ、マルチシグ・ウォレットや耐量子署名、さらにはプライバシープロトコルをイーサリアムの「第一級市民(First-class citizens)」へと引き上げるものだ。これにより、プライバシーに配慮した取引やスマートコントラクト・ウォレットによる操作が、中間業者を介さずに公開メモリプールから直接かつ迅速に処理されるようになり、検閲の余地を技術的に排除する。
サイファーパンク精神への回帰と未来への展望
ブテリン氏は自身のSNS投稿において、これまでのイーサリアムが普及を優先するあまり、ノード運用の困難さや中央集権的なサービスへの依存といった「価値の希薄化」を許してきたことを認めた。しかし、同氏は「もう妥協はしない」と断言し、2026年を「10年間にわたる後退を逆転させ、真の分散化を再獲得する年」と位置づけた。
この計画には、軽量クライアント「Helios」の導入によるユーザー自身のデータ検証や、ゼロ知識証明を用いたプライバシー決済の標準化なども含まれている。ブテリン氏が描くビジョンは、現在のシステムと高度に統合・互換性を持ちながら、分散化・プライバシー・検閲耐性というサイファーパンクの理念をボルトオン(追加実装)の形で強化し、長期的にはネットワーク全体をより堅牢なものへと再構築することにある。この「本気」の姿勢は、イーサリアムが単なる金融プラットフォームではなく、自由で公平なインターネットの基盤としての理想を追求し続ける決意の表れといえる。
まとめ
GENAIイーサリアムの提唱者であるヴィタリック・ブテリン氏が、ネットワークの「検閲耐性」を大幅に強化するための技術アップグレードを強力に支持したというニュースは、ブロックチェーンが真に自由で中立なインフラとして存続できるかどうかの分水嶺に立っていることを示しています。
これは、イーサリアムが単なる効率性や価格の上昇を追い求めるだけでなく、いかなる国家や巨大企業による介入も許さないという「分散化の理念」を技術的に再定義しようとする、極めて重要な動きです。
今回のアップグレードの背景には、イーサリアムが「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」へと移行して以降、特定のバリデーター(取引を承認する参加者)が規制当局の要請などに従って、特定の取引を意図的に排除できてしまうという「検閲リスク」が浮き彫りになったことがあります。ブテリン氏が提唱する「包含リスト(Inclusion Lists)」などの仕組みは、取引の組み立てに関わる者が恣意的に特定の取引を拒否できないように強制するものです。これにより、特定のユーザーやプロジェクトが不当にネットワークから締め出されることを防ぎ、誰もが平等にアクセスできる公共財としての性質を担保しようとしています。
技術的なメリットとしては、数学的なアルゴリズムによって中立性が保証されるため、法規制や政治的な圧力が強まった環境下でも、ネットワークの稼働と取引の継続が守られる点が挙げられます。これにより、イーサリアムは長期的に「最も信頼できるグローバルな台帳」としての価値を高めることができます。一方で、課題やリスクも存在します。検閲耐性を極限まで高めることは、マネーロンダリングやサイバー犯罪などの不正な取引を阻止したい各国政府との摩擦を避けられないものにします。また、こうした複雑なセキュリティ機構を導入することで、システムの設計がさらに難解になり、ネットワークの処理速度や拡張性に影響を及ぼす可能性も議論されています。
今後の展望として注目すべきポイントは、この「検閲耐性」という抽象的な理念が、実際のプログラムとして実装された際に、世界各国の規制当局がイーサリアムを「制御不能なインフラ」とみなすのか、あるいは「信頼に値する公共インフラ」として受け入れるのかという点です。この技術的な決断が、将来のイーサリアムの法的地位を左右する最大の焦点となるでしょう。

