
仮想通貨ミキサーの利用が2022年以降で最高水準に回復、ケンブリッジ大学の最新調査が示す実態

ケンブリッジ大学オルタナティブ金融センターの新たな調査により、仮想通貨ミキサーの利用が2022年以来の最高水準に達していることが明らかになった。トルネード・キャッシュに対する制裁措置以降、長らく低迷していたミキシングサービス市場であるが、利用者がよりコンプライアンスに準拠した新しいプラットフォームへと移行することで、急速な回復を見せている。
本稿では、Wenbin Wu氏(ウェンビン・ウー氏)とKeith Bear氏(キース・ベア氏)が発表した最新のレポートをもとに、仮想通貨ミキサー市場の動向とユーザー行動の変化について考察する。
制裁による大打撃からの段階的な回復
2022年に実施されたトルネード・キャッシュへの制裁は、ミキサー市場全体に破壊的な影響をもたらした。同レポートによると、制裁発動からわずか数日でトルネード・キャッシュの1日あたりの取引件数は97パーセントも急落し、ミキサー全体の取引量も48パーセント減少するという事態に陥った。この影響は長引き、2022年後半から米国財務省がトルネード・キャッシュに対する制裁を解除した2025年3月21日に至るまで、市場の利用低迷が継続した。
しかし、市場は徐々に活気を取り戻しつつある。2023年の取引件数が約1万6000件であったのに対し、2024年には約2万1000件と緩やかな上昇を記録した。そして2025年にはこの傾向がさらに加速し、総取引件数は約3万2000件へと大幅な増加を見せている。これは制裁解除という外的要因だけでなく、市場参加者のニーズが再びプライバシー保護技術へと向かっていることを示唆している。
代替プロトコルの台頭と変化する取引スピード
市場全体の取引数は着実に回復しているものの、かつて圧倒的なシェアを誇っていたトルネード・キャッシュの回復は去年の制裁解除以降も限定的なものに留まっている。調査を実施したWenbin Wu氏とKeith Bear氏は、ユーザーが代替のプラットフォームへと明確にシフトしていると報告している。その筆頭格となっているのがRailgunであり、現在最も広く利用されているミキシングプロトコルとしての地位を確立している。
また、2022年以降の市場環境において、ミキサーとの資金のやり取りの速度にも顕著な変化が表れている。2022年以前は、ウォレットが作成されてから24時間以上経過した後に取引が行われるケースが一般的であった。しかし現在の状況においては、取引の大部分がウォレット作成から24時間以内に実行されており、資金移動のサイクルが大幅に短期化していることがデータによって示されている。
セキュリティインシデントにおける悪用の継続
このような合法的なプライバシー保護のニーズが高まる一方で、サイバー犯罪者によるミキサーの悪用は依然として深刻な課題である。バーミンガム大学およびシドニー大学の研究者らが発表した2025年の論文によると、2022年8月8日から2025年3月21日までの期間において、イーサリアム関連のセキュリティインシデントの78パーセントで、ハッカーが引き続きトルネード・キャッシュを使用していたことが判明している。
コンプライアンスを重視した新たなプラットフォームが台頭する一方で、抜け道を模索する悪意のあるアクターの活動も並行して続いており、技術と規制を巡る攻防は今後も続くものと予想される。
まとめ
GENAI仮想通貨の「コインミキサー(混合サービス)」市場が、当局による取り締まりを乗り越え、新しいプラットフォームへのユーザー移行を伴って回復傾向にあるというケンブリッジ大学の研究報告は、プライバシー保護と規制のせめぎ合いが新たな局面に入ったことを示しています。
この報告の背景には、Tornado Cash(トルネード・キャッシュ)やSinbad(シンバッド)といった主要なミキサーが制裁や閉鎖に追い込まれた後、市場が一時的に縮小したものの、すぐに代替となる新しい分散型プロトコルや、より匿名性の高い技術を駆使したサービスが台頭してきたという事実があります。ユーザーは監視が強まった古いプラットフォームから、規制の網をかいくぐる設計がなされた新興のプラットフォームへと活動の場を移しており、結果としてミキサー全体の利用ボリュームは回復の兆しを見せています。
技術的なメリットとしては、ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proofs)などの高度な暗号技術を用いることで、取引のプライバシーを確保しつつ、ネットワークの透明性を維持しようとする革新的な試みが挙げられます。これにより、正当な理由でプライバシーを求めるユーザーにとっての利便性が向上しています。一方で、重大なリスクも継続しています。依然として、ハッキングで盗まれた資金の「洗浄」にこれらのサービスが悪用されるケースが多く、テロ資金供与やサイバー犯罪の温床になっているという当局の懸念は解消されていません。
今後の展望としては、当局が個別のサービスを叩く「モグラ叩き」のような規制から、プロトコルレベルでの監視や、取引所(CEX)への入金段階での厳格なスクリーニングなど、よりシステム全体を網羅する対策へとシフトしていくかが注目されます。プライバシーという基本的権利と、犯罪抑止という公共の利益をブロックチェーン上でいかに共存させるか、ケンブリッジ大学の研究はその議論を深めるための重要なデータを提供しています。

